ビオラ

バイオリンとほとんど大きさが同じのビオラを制作しました。

ボディ長はバイオリンより1センチほど長いだけです

バイオリンとの比較(左がフルサイズのバイオリン)

 

ちなみに寸法は、普通のバイオリンのボディ長が356mmなのに対して
今回のビオラは366mmでした。(設計より少し長くなってしまいました)

 

「小型ビオラ」を作るときには、

① ボディが小さくボリューム感が無い

② 弦の張力が弱くなるので音が出にくい

③ 振動弦長が短くなるのでサステインのない浅い音になりがち

などなど、いくつかデメリットが考えられますが

表、裏板のアーチと厚み取り、ネックアングルの設定、など熟慮を重ねておおむね満足できる音に仕上がりました。一番アカンのが「バイオリンみたいな(細い)感じの音」になってしまうことですが、それを避けられたのが良かったと思います。

特に小さい割にはC線はビオラらしいふくよかな音になっています。

ニスのフィニッシュはオリジナルのBellosioの写真を参考にシェードをかけた軽いアンティークフィニッシュ。

裏板のアーチの感じがわかりますか?

傷はつけずにシェードをつけました。駒の高さは38mmで標準的

指に力のない女性からの依頼で、ペグは「ウイットナー府ファインチューンペグ」を取り付けました。調弦はとても簡単。

(但し、当該ペグは構造と質量のため楽器の振動特性が少し高音側に傾きます。簡単に言うと「金属的」な音になるということですが、そこに関しては利便性とのトレードオフですね)

以下、各サイズ。

ボディ長 366mm アッパーバウツ 175mm ミドルバウツ 175mm ロワーバウツ 212mm

ストップ長 197mm ネック長 134mm 弦長 336mm

横板高 アッパー 34mm   ロワー37mm

アーチ高 表19,5mm 裏 20,5mm

IMG_1850Gasparo da Salo 1580 をモデルに製作。

小型ですが低音のふくよかな「ビオラらしい」一台です。

このモデルで今まで何台も制作してきましたが、そのうちの一台。弦長(上ナットから駒までの振動弦の長さ)も短く設定してるので左手に負担なく演奏することができますが、弓圧を強くかけて行ってもつぶれることはありません。

外観は「ゆるキャラ」のような、どことなく愛嬌のあるスタイルです。

IMG_1851

裏板もハイアーチ(ふくらみが大きい)にしてボディの「内部空間」を稼いでいますが、単にハイアーチにしてるだけでは鳴らしにくくなってしまうので独特の工夫も加えてあります。

IMG_1852

スクロール~ペグボックスの造形もいわゆる現代の物とは違うので面白いですね。

(スクロールは単なる飾りではなく、ボディの響きにも大きく影響します。よく観察すると過去の制作者の「響き」に対する考え方が垣間見えるようです)